迷っている暇はなかった。

私の右脚が付け根から消失する!

『無影の蹴撃』!

殺られる前に殺るしかない。

先手を取らなければ…後手に回ったら確実に殺される!

まだしとねが堕蓮の心臓の扱いに慣れていない今のうちに。

私は可能な限り、無防備なしとねに蹴りを叩き込んだ。

まさに滅多打ち。

十、二十、いやそれ以上。

人間より遥かに優れた動体視力を持つ亜吸血種でさえ目視が不可能な速度の蹴りを、全力で容赦なく打ち込む。

たとえ堕蓮の心臓を得たとはいえ、しとねにもその蹴りは見えていなかったに違いない。

その証拠に回避も防御もできず、次々と被弾する。

それが『回避も防御もできず』ではなく、『回避も防御もしない』という事に気づいたのは…。

「ちょいと試してみようか」

しとねの双眸が赤く輝くのを見てからだった。