首の骨を砕かれ、大量の血を流し、それでも必死で這いずる可哀相な艶。

私はそんな彼女を抱き起こし。

「っっっっっっっ!!」

左手で、その堕蓮の心臓を抉り取った。

「なっ!」

「……!!」

梓と儚が私の行為に息を飲む。

私は表情一つ変えない。

そのまま、ひゅーひゅーと壊れた呼吸を繰り返す艶の心臓を引き抜いた。

…どの道長くなかった艶は、その一撃で完全に息を引き取る。

「艶…よく約束を守ったね…」

最期に一度だけ、哀れむような、いとおしむような表情を向けた後。

「!!!!!」

私は右手で自分の心臓を抜き取る!

この上ない苦痛。

命の要たる心臓を引き抜くという巨大な喪失感。

如何に亜吸血種といえど、心臓を抜き取ってしまっては一分ももたない。

まだ体が動くうちに。

私は左手に握った艶の心臓…堕蓮の心臓をねじ込む。

「な…何て事を…」

顔面蒼白になりながら、儚が呟いた。