私は梓を過小評価していたようだった。

事実、しとねの攻撃を次々と迎撃していく梓。

冷静さを欠いて、スタミナ配分すらせずに全力で『旋』を放つしとねに対し、梓はまだ汗すらかいていない。

余力があるのはどう見ても梓の方だった。

…野須平誠、艶。

優秀な配下に任せきりで、胡坐をかいたまま怠惰に過ごした。

それが亜吸血種としての彼女の寿命を終わらせたのだ。

「くぅっ!」

何百合という交錯の末、両者は対峙する。

「はぁ…」

梓が溜息をつく。

失望、そして退屈を持て余した溜息。

その態度がしとねの神経を逆撫でにした。

…対照的な二人。

次の交錯で決するのは明らかだった。

…ここに、この瞬間に…。