「つまらないねぇ…」

煙管を拾い上げ、しとねは溜息をつく。

そんな溜息すら悩ましげに見えた。

「あんたじゃ私の『エゴ』は満たせないね…まぁ出碧の能力は、元々戦闘向きじゃないからねぇ…」

血まみれになった私の背後に回ったしとねは、私を抱きしめ、首筋に舌を這わせる。

「じゃあ『こっち』の方で満足させてもらおうかね…せいぜいいい声で鳴いておくれ…」

その細く白い…しかし猛禽類の爪を思わせる手が、私の肉体をまさぐろうとする…瞬間。

「!?」

鼻先に突きつけられた不可視の蹴り!

しとねは私を放して回避する事で、辛うじて整った鼻を削ぎとられずに済んだ。

「嬲れるなら闘争でも陵辱でも関係なしか…節操ないわね、野須平しとね」

そんな声が聞こえる。

…部屋の入り口から漂う夜気。

その夜気に紛れ、杖縁梓が佇んでいた…。