それでも。

「あ…ぅうぅ…ぁ…」

艶は床に血の跡を残しながら這いずる。

小刻みに震える手足を懸命に動かしながら。

向かう先は当主の間。

飼い主の野須平しとねの元だ。

「…大した忠犬ぶりだな」

俺はズルズルと壁にもたれかかってしゃがみ込んだ。

…生憎と俺は駄犬でな。

あの傷で艶がしとねの所に行ったとて、何の役に立てるものでもないだろう。

「…ちょっとばかり…休ませてもらうぜ…」

這いずる艶の後ろ姿には目もくれず、俺は静かに目を閉じた…。