その日もいい月だった。

何となく誘われるようにアパートを出て、私は夜の散歩としゃれ込んだ。

…やはり夜は落ち着く。

真昼の何もかもを焼き尽くすような日差しから解放され、アスファルトに残された太陽の余韻が立ち昇る夜の街。

夜気が肌を冷やし、同時にえもいわれぬ昂揚が体の中を支配していく。

ただ闇に包まれる。

それだけの事なのに、何故私達はこんなにも強烈な衝動に駆られるのだろう。

暴力衝動。

殺戮衝動。

陵辱衝動。

それは太古の昔から本能に刻まれた抗い難い感覚。

私達は自我ではなく、意思ではなく、本能によって生きる者なのだ。

夜が来る度に、つくづくその事を思い知らされる。

理知的なんて言葉は知らない。

衝動のままに生きる『ヒトデナシ』。

そう。

私達は紛れもなくヒトデナシだった。