『艶は俺に任せろ』

そう言っておきながら、俺は早速前言を撤回したい気分だった。

この女は最悪だ。

こんな反応の薄い奴を相手するのが一番面倒だ。

効いているのかいないのか判断できない。

先の見えないトンネルを歩き続けているような気分。

こういう相手との闘争は、次第に心が折れそうになってくる。

俺ほどの傲慢な男でさえ、精神的にまいってしまうのだ。

…もし、しとねとの闘争の中で梓と儚が劣勢に立たされたら。

追い詰められたら。

梓は無理矢理に忠誠を誓わされているだけだ。

体を張ってまで儚を守ってやる理由はない。

しとねに寝返るかもしれない。

そういう考えが浮かぶのは当然の事だろう。