「私が『堕蓮持ち』である事はしとね様しかご存知ありません…驚かれるのも無理はないかと」

「そうだな…堕蓮持ちはもう数が少ない…だが希少な能力だ。その生き残りはでかい勢力に飼われてても不思議じゃねぇか」

息苦しくなるほどの強烈な殺気が周囲を取り巻く。

『同類同士』任せろと言った武羅人の言葉の意味がわかった。

しとねを相手にするより、堕蓮持ちである艶を相手にする方がある意味危険なのだ。

堕蓮の心臓を持つ者の高出力に対抗するには、同じ堕蓮持ちでなければならない。

ここに私がいても巻き添えを食うだけだった。

「あの女を殺して…物足りなかったら俺も顔を出す…俺の取り分残しとけって儚に言っとけ」

「…よく言うわ。あの給仕を前にして」

苦笑いするしかない。

私は迷わず背を向けて走り出す。

「行かせません」

板張りの床を蹴る艶の足音。

「つれねぇな、仲良くしてくれよ」

ほぼ同時に武羅人が地を蹴る音。