室内に広がる血の海をものともせず、その給仕…艶は無表情で私達を見る。

その顔に、背筋が凍った。

無表情、無感情、無感動。

内面を表に出さないという行為が、これ程恐ろしく映ったのはこれが初めての事だった。

「……」

私も武羅人も動けない。

わかっていた。

私達を迎えに来た時から、この女の異質さは理解できていた。

今の今までただの給仕を装っていた艶。

しかしここに来ていよいよ、『亜吸血種』の顔を見せようとしている。

「はぁー…」

突然。

無造作に頭を掻く武羅人。

隙だらけの仕草…と見せかけて!

「!」

予備動作なしで艶の着物の襟を掴む!

「女の顔を殴るのは趣味じゃないがな」

言いつつ躊躇いも逡巡もなく、武羅人は残ったもう片方の手で拳を打ち出した。

艶の顔面狙い!