座ってから。

「………………………」

「………………………」

「………………………」

「………………………」

艶がお茶を運んでくるまでの間、私としとねは一言たりとも言葉を発さなかった。

視線さえもずらさない。

交錯させたままの、強い意思を込めた眼。

睨むでもなく、鋭くもなく、ただ視線を交わらせる。

腹の探りあい、という訳ではない。

相手が何を考えていようと今はどうでもいい。

ただ、視線をそらせばひと飲みにされる。

互い相手に飲まれない為だけの視線の交錯だった。

そもそもこの程度で腹が探れるほど、野須平しとねは簡単な女ではなかった。

…しとねと私にお茶を出し、艶は一礼して当主の間を後にする。

「飲みなよ」

しとねが言った。

「熱いうちが一番美味い。その茶菓子もなかなかだよ」

「……」

言われるままに口にしたお茶は、確かに美味しかった。