ここに来てまた、俺は貧富の差という奴を噛み締める。

日本庭園を敷地内に持っていて、その池で錦鯉を飼っている金持ちを、俺はリアルで初めて目の当たりにした。

何をすればこんなに金が転がり込むのだろう。

…まぁ亜吸血種だ。

『何をして』金儲けするかなんて訊くまでもないが。

…野須平の給仕、艶と名乗る女は、時代劇の奉行所の門のような屋敷の入り口から俺達を招き入れた。

その奥にあったのは、忠臣蔵の松の廊下のような長い長い板張り。

庭に沿って続くその廊下は鶯張りという徹底ぶりだ。

「この屋敷には忍者でも忍び込むのかい?」

そんな皮肉にも艶は答えず、逆に俺が儚にたしなめられる結果となった。

やがてとある一室の前で艶は立ち止まる。

「お連れの方はこの部屋でお待ち下さい。後程お茶を用意致します」