梓の質問への返事として、女はまず恭しく頭を下げる。

「突然に失礼致します…お察しの通り、私は野須平家で給仕をしております、艶といいます」

「給仕ね…」

梓が鼻を鳴らす。

私も同感だった。

この面子の前で眉一つ動かさないその胆力。

ただの給仕如きである筈がない。

「実は…不躾ではありますが、野須平家の当主、しとね様が、皆様を真夜中の茶会にご招待したいと申しております」

「茶会…ですか」

私は呟く。

勿論額面通りに受け止める気はない。

…今後の勢力図に影響する、重要な会談だ。

「ちょうど喉も渇いた事ですし…謹んでお受け致します」

ニッコリと微笑んで申し出を受けると、艶と名乗るその女性は、私達を案内するように歩き始めた。

その印象もあってか、どこかお茶運び人形のように思えたのは私だけだろうか。