私の皮肉など気にするでもなく、武羅人は警戒すらせずに工場内へと入っていく。

…暗闇の中。

幾つもの殺気立った眼が光る。

ここは亜吸血種の群れの塒。

待ち構えているのは当然だ。

工場内だけでなく、どこに潜んでいたのか私と梓の背後にも、複数の亜吸血種が姿を見せていた。

「ゾロゾロ雁首揃えて…」

武羅人の双眸が、爛々と赤く光る。

「有象無象ばかり、よくもまぁ集まったもんだ」

彼の胸におさまる堕蓮の心臓の鼓動が聞こえてくるかのようだった。

だけど誰より一番最初に動いたのは。

「近づかないで、下郎」

不意打ちを狙って身じろいだ私達の背後の亜吸血種。

その連中を蹴り散らした梓だった。

彼女の『無影の蹴撃』により、先程まで人の姿をしていた肉片が周囲に散らばる。

…それが惨劇の狼煙だった。