至福の表情で返り血を浴びる雑種の女。

そこへ。

「いい夜ね」

長い黒髪の女が歩み寄る。

咄嗟に振り向く雑種の女。

そして振り向くと同時に。

「がっ!」

無影の殺意が雑種の首を刎ねた。

鋭利な刃物で切断されたように、その断面は滑らか。

血液すら、噴き出す事を忘れたかのような流麗な動きだった。

…暗がりの中、血の雨を降らせながら黒髪の女…杖縁梓は背後の私に言った。

「これでいいかしら?儚様」

「はい」

私は微笑を浮かべて頷く。

「出碧家の覇業…その第一歩です」