重苦しい鉄扉を開く。

まず最初に目に飛び込んでくるのは、汗と白濁に塗れてぐったりとした、全裸の女。

端正な顔も、キメ細やか白磁の如き肌も、絹糸の如き漆黒の髪も、何もかもが汚れている。

娼婦か、物乞いか、或いは屍か。

そう見紛うほどの姿だった。

壁から吊るされた鎖によって両手を繋がれているのだから、尚更である。

杖縁邸…いや、今は出碧邸の地下室。

俺と儚の間では『檻』で通っている。

かつてのこの屋敷の主、杖縁梓をここに監禁し、毎日毎昼夜責め苦を与え続け、今日で三日目。

儚の予想通り、梓は精神的にも肉体的にもかなり疲弊していた。

特に精神の方は相当に消耗しているようだ。

陵辱による陵辱。

蹂躙による蹂躙。

これまで杖縁家の当主、令嬢として扱われていた自分が、一転して物以下の扱いを受け、穢しに穢される。

最早プライド云々の問題ではない。

亜吸血種としての尊厳すら失い、精神崩壊寸前まで追い詰められていた。