「当主にコーヒーを淹れさせる気ですか?」

そんな事を言ってクスリと笑ってみる。

…彼を虜にしてから気づいたのだけど、彼はどうも私を『従うべき者』として認識しているだけらしい。

裏切りはしないし、守るべき者として認識しているが、己より上だとは思っていない。

言うなれば友人や家族程度の認識。

だから彼自身の『エゴ』である束縛や服従に対する嫌悪は相変わらずだし、自由を奪おうとすると私であろうと反抗する。

それさえ覚えておけば、彼は実に優秀な狗だった。

「で…」

カップを音も立てずにテーブルに置く。

「どうですか?梓の方は」