「ふぅん…」

野須平本家、その当主の間。

紫煙をくゆらせながら、私はいつものように肘掛けに寄りかかる。

野須平誠が殺られた。

その報告を受けたのは、まさに今しがたの事だ。

薄暗い部屋の中で、自分でもわからないどこか一点を見据える。

別に怒っちゃあいない。

何で私が怒る必要があるのさ。

野須平誠は優秀な狗だった。

これまでに野須平の敵をことごとく葬り去ってきた、我が血族最高の狗。

そしてそれがたまたま私の息子だったってぇだけの話だ。

私にとっては息子でも何でも、狗には変わりはない。

肝心なのは使えるかどうか、その一点に尽きる。

感傷なんてありゃあしない。

そうさ…あるもんかい…。