「もう大丈夫なのか、主」

「はい…大丈夫です」

問いかける武羅人に私は答える。

…流石に強靭な『エゴ』の持ち主だけに、私の吸血を受けても多少の自我は残っているらしい。

主である私への言葉遣いがなっていない。

けれどそれを補って余りある有能さ。

「武羅人…今後私の事は、『主』ではなく『儚』と呼んで下さい」

私はクスリと笑った。

「出碧儚。出碧家唯一の末裔にして、再興する出碧家の新しい当主となる女です。覚えておいて下さいね」

「了解した」

武羅人は頷く。

「出碧家再興…それがお前の『エゴ』なんだな?なら俺は出碧儚の『エゴ』を満たす為に狗として最高の働きをしよう…それで構わないな?儚」

全く。

不遜な『狗』だ。

それでも。

「はい…お願いします」

私は微笑んで見せた。