「何だか腹が減ったな」

返り血を拭いもせずに武羅人が背伸びする。

「運動したんで腹いっぱい食いたい気分だ。ステーキなんていいな。レアの奴をたらふく食いたい」

この凄惨な光景を自ら作り上げた後で、どの口が言っているのだろう。

正常な神経ではこの闘争渦巻く渡蘭市では生きていけない。

けれどこれほど無神経なのもどうかと思う。

私は当分肉は口にしたくない気分だ。

「しかし参ったな…二ノ宮はどうも野須平に殺られた後みたいだしな…誰が焼いてくれるんだ?」

呑気に言いながら歩き出す武羅人。

彼はふと立ち止まり。

「お前料理は出来ないのか?」

振り向いて。