血みどろで部位の判別さえも難しくなった野須平の顔。

その顔に、俺自身も顔を近づけて。

「てめぇは飼い『狗』、俺は野良『犬』。同じイヌでも立場が違う…」

よく理解できるようにゆっくりと告げた。

「野良犬は餌を求めて徘徊する…てめぇの餌はてめぇで確保しなきゃならない。だが飼い狗は違うだろう?黙っていても飼い主から餌を与えられる…だからてめぇには理解できんかもしれんがな…苦労しなきゃ餌を食えない野良犬は、餌への執着心が強いんだ」

そう。

やっと手に入れた餌は残らず食い尽くすまで俺のモノだ。

誰にも与える訳にはいかない。

「俺の梓(エサ)を横から掠め取ろうとする飼い狗は、俺の『エゴ』が許さない」

持ち上げた野須平を、再び顔面から幹に叩きつける!

渾身の力を込めて。

グジャアッッ!!

頭がひしゃげ、血が、脳漿が、幹に、地面に、俺の体に四散した。

大きく痙攣し、跳ねる野須平の身体。

それが最期だった。