そんな厭味たっぷりの里菜ちゃんと別れ、私は一人で自宅に向かう。
空は、もう少し薄暗くなっていた。

あと二ヶ月、か。
まだ下書きもできていない私にとって、その数字は絶望的だった。

いい加減、スランプを脱出しないと。


「……はあ…。」


すごく憂鬱な気分になって、私は目を閉じた。
どうして描けなくなってしまったんだろう。うん、最悪だ。


「っ、くあ~!」


私が、意味のわからないうめき声をあげた瞬間。


「作間?」


目の前で、声がした。
聞き覚えのある、澄んだ声。

確か、この声は。


「……天祢、くん!」


有り得ない、と思ったけど。やっぱり、目の前にいたのは天祢くんだった。


「え、ってか…なんで、ここにいるの?」


そう。天祢くんが立っているのは、私の家の目の前。

私がそう言うと、彼は目を見開いた。
そしてゆっくりと視線を落とした。


「……ここ、作間の家…なの?」

「え?う、うん。」


私はゆっくりと彼に近寄り、顔を覗き込んだ。
その瞬間、彼が顔を上げた。

――…ゴツッ


「っ、つ!?」

「いっ、いったあ~!」


何事か、と顔を上げた天祢くんの頭と、私の頭がぶつかったってわけだ。

い、言ったら悪いけど、天祢くんって、石頭…!
ものすごく痛い。