「ご、ごめんねっ!」
「え?」
「天祢くんがいるの、わかんなくてっ!もう帰ってもいいよっ?私、一人でやるからさ!」
天祢くんはゆっくりと日誌を私に渡し、「はい」と無表情なまま言った。
「ありがとっ!じゃ、また明日ねっ!」
「いや、いいよ。」
そう言うと、天祢くんは私の隣に椅子を引きずってきて、そこにゆっくり座った。
「………へ、」
「だって、俺も当番だもん。帰ったら怒られちゃうっしょ。」
そう言って、天祢くんは私の筆箱からシャーペンを取り出した。
「え、と。ここ、名前かくの?」
「あっ、うんっ!」
天祢くんは、「ふーん」と呟きながら、サラサラと名前を書いていく。綺麗な手だなあ、なんて私はぼんやりと考えていた。
天祢透也、という綺麗な名前に、私は思わず溜息をく。
「ん?なに?」
「っ、あ!素敵な名前だなあ、って!ごめんねっ、溜息なんて着いちゃって!」
あはは、と笑いながらそう言った私に、天祢くんは無表情で首を横に振った。
「いいよ、別に。変わった名前でしょ。」
サラサラと文字を書いていく天祢くんの手を見つめながら、私は首を横に振った。
「変わってるから、溜息ついたんじゃないの、綺麗だったからだよっ!」
