執事様とお嬢様

累さいど



「……る、累…?」



重い沈黙の中、亜矢芽が申し訳なさそうに口を開いた。



「い、今の…人って…?」


「ああ…。元カノで、今まで仕えていたお嬢様だ。」



「…そっか…。ねぇ…累…わたし…」



亜矢芽は悲しそうに俯いた。



「…大丈夫だ。もうきっと会うことはない。」


「…でもさっき…好きだって……」


「ああ。それは…きっと何十年後の話だよ。美姫は数年で帰ってくるといっていたけどあれほどの大企業だ。数年で帰ってくるなんてありえないだろう。」



「でも…あの人も何もいってなかった…」



「美姫もわかっているんじゃないか?だから、俺に好きと言ったんだろう…。」



「…そんな…」


「だから、俺は亜矢芽の側にいるよ?でも…心は…美姫の側にある…それでもいいの…?」



「………。」



「…嫌なら…俺を放してくれないか…」



「…累は…わたしから離れてどうするの?」



「…高校卒業して、大学いって…きちんと執事になるかな?」



「…あの人の近くに行くために?」



「ああ。それが一番近道だから。」



「……わかった……わたし、累から離れて頑張っていく………」



「亜矢芽…ありがとう。」



「ううん。もともとわたしが累を縛ったのがいけなかったから…。」



「いや、俺は縛られてなんかいなかったよ。」



「…そっか…。今まで一緒にいてくれてありがとう。」



「こっちこそ。さんきゅな。」



「…累…わたしもね…好きだったんだよ?」



「知ってる。」



「なんだー。…そんじゃ、帰るね。」


「…一人で…」


「大丈夫!わたしはこれから一人で頑張るんだからー!」


「そっか。んじゃな…。」


「うん。ばいばい。」