「海外には社長も同行ですか?」

「いや、社長が日本から出てったら
事務所の仕事が滞るだろ
代わりのマネがついた」

「女性?」

「男…おっさんだよ
…って焼きモチでもやいてくれるの?」

「いえ……違います
監視役ですから」

「監視役なら俺と一緒に行こう」

私は首を横に振った

行けるわけがない
外は怖い

私以外の人間はすべて獣に見える

誰もが私の命を狙い
私を誘うとしているようい感じてしまう

そんなことはないと、わかっているのに

人々の言葉が
笑い声が

鋭利な刃物となり
私の体のあちこちに差し込んでくるような感覚に陥る


王子がふっと笑うと
右手で私の前髪を触った

「わかってるよ
悪い、無理を言った
いいんだ、気にするな」

「すみません」

「謝るな
時間が空いたら連絡するから
メールもする」

「暴飲暴食はしないでください」

「ははっ。気をつけるよ」

王子が苦笑いをした