事情聴取が終わった私は警察の外に出た

沢山の記者が一斉に桜嗣を取り囲んだ

記者のうしろにいるカメラマンがフラッシュをたく

桜嗣は私の腰に手をまわして、記者の前で足を止めた

「恋人が刺されたって本当ですか?」
「犯人は元マネージャだと…」
「いいえ。恋人の不倫相手だと聞きましたが?」


桜嗣は顔をあげると、まっすぐに記者を見つめた

「彼女が刺されそうになったのは事実です
が、その内容は今は申し上げられません
詳しく知りたいのでしたら、来月販売になる自叙伝をお読みください」

え?

だって書かないって言ってたのに

桜嗣はマスコミの間を抜けると、私と一緒に車に乗り込んだ

「桜嗣、いいの?」

「何が?」

「本、出さないって言ってたのに」

「まあ、ね
結婚式資金を貯めようかと思って」

桜嗣がにっこりとほほ笑んだ

「え?」

「だから式の資金だよ」