「莉緒っ! おい、莉緒」

目を覚ました
王子が私の肩を掴んで、心配そうにのぞきこんでいた

また大汗をかいていた

「おう…じ?」

「ああ、そうだ
大丈夫か?
うなされていた」

「怖い…夢を見たの」

私は王子に抱きついた

「もう大丈夫だ」

王子も私を抱きしめてくれた

怖かった
王子がそばにいてくれた良かった


「莉緒、しばらく仕事を休めよ」

「え?」

「莉緒が心配だ」

王子が私の前髪に触れた

王子の香水のにおいが、ふわりと手首から香ってくる

「大丈夫、平気だよ
仕事は休めない」

「莉緒…坂本一人でも充分だろ?」

「でも、明日は2人も撮影が入ってる」

王子が泣きそうな目で私を見つめた

「俺の場合は、母親の死によって解放された
だから莉緒の抱えている恐怖は理解できない

でも自分の心の中に残った後遺症として残る恐怖心はよくわかる

無理はして欲しくないんだ」

王子のほうが苦しそうな表情になった

王子の手がそっと私の腹部にいく
桜稀さんが刺した傷跡がある位置に触れる

「無理はしない、約束する」

私は王子に抱きしめられながら、ベッドに横になった