『ごめん、莉緒を送れなかった』

電車に乗っていると、携帯が震えた

王子からだった

私は吊皮を触ってない片手で、メールの返事を打った

『戸倉さんに怒られちゃった?』

『こってりと
ああいう女は好きじゃねえんだ
生理的に受け付けないっていうか……母親と同系統に見えて苛々する』

母親と……

てっきり色っぽいから
王子もあの人の妖艶さにくらくらしてるんじゃないかって想ってたけど

違うんだ

王子があの人に冷たく対応するのは…


母親に似ているから


あの別荘で過ごした7年間の生活を思い出すから


だから戸倉さんには冷たくなる




きっと私も…
達明のような男が目の前にいたら

いらいらするんだろうな


違う人だってわかっているのに


その人には何の罪もないのに


勝手に腹が立って、相手を嫌いになって




王子と私
心に傷を負ったモノ同士だね


そして普通の恋愛に憧れているモノ同士だ