「勝手に行動しないでもらえる?
最初に言ったわよね?
単独行動をするときは、私はきちんと報告するって
そうじゃないとマスコミ対策ができないでしょ?
わかってるの?」

ロビーで座ってる桜嗣に向かって、背の高い女性が腕を組んで怒っていた

私は階段でロビーに下りると、桜嗣に近づいて行った

「わかってるよ
昨日のは謝っただろ」

桜嗣が面倒くさそうに女性に言う

「わかってないじゃない
おかげで朝から報道陣に囲まれて…」

「これからは気をつける
それでいいだろ」

桜嗣はむすっとしていた

「ご機嫌、悪そうですね」

私の後ろにいた坂本さんが囁いてきた

「…怖い人じゃないといいね」

私は坂本さんに振り返って、苦笑いした

桜嗣がどんな人か知ってるけれど、仕事場では初対面ってことにしようと思った

だって私みたいな一般人がなんで桜嗣と知り合いなんだって、聞かれたら答えられないから

あんな過去はもう忘れたい

桜嗣と出会えたのは嬉しいけれど

多田野先生とのことは忘れたい

たまに
夢に見る

多田野先生に追いかけられ、真っ暗の部屋に閉じ込められる夢を

事実は異なって、多田野に殺されそうになったり

犯されそうになったり



いつも助けてくれるのは王子

手を差し伸べて、多田野先生から助けてくれる