コンコン

「ちょっといい?」

開け放っているのにノックの音がした

「は、はいっ!」

私は飛び上がった

すでに就業時間は過ぎている
もしかして明日の会議に変更時間でもあるかと思い、背筋を伸ばしてドアの方を見た

「莉緒」

目の前に立っている男を見て、私は驚いてしまった

時が止まってしまえばいい


ううん
時が止まったかと思った

優しく微笑んでいる王子がまるで夢の中に出てくる王子みたいで

私は寝ているんじゃないかって疑ってしまう

夢じゃない
だって夢じゃない

私は寝ていない
起きてる

目の前にはフランスから帰ってきた王子が立っているんだ

「桜嗣?」

私が呟くと、王子が嬉しそうに顔を緩ませた

「莉緒」

2年たった王子はすごく格好よくなっていた
どこがどう変わったなんて言えないけど

洗練されている

服の着こなしも
髪型も

2年前の王子とは違った

「会いたかった」

王子が口を開いた

私は唾を飲み込むと目頭が熱くなった

涙で視界が歪む

ずっと会いたいと思っていた王子が目の前に立っている

そう思うだけで
胸が苦しくなる

呼吸の仕方がわからない