ドルチェ

「またさー、小学校とか、中学んときみたいに班とか、いろいろ一緒なのかなぁ」


平坦な道に入っても私は、腰に回している腕の力を緩めなかった。


「さぁなー。俺はあいが一緒だといろいろ楽だけど」


「楽?楽ってなによ!」


「虫除け!虫と書いて女と読む」


漣はハンドルを片手で操作しながら右手で空に虫と書いた。


「何それ。私ガードマン的位置なの?!」


「まーねー。俺、何だかんだでモテるしぃ?」


「うっわ。ウザすぎる」


またこれからも漣の世話係か、と想像するだけで疲れた。
休み時間にフラリと消えて、屋上で寝ていたり。授業のノートから、研修のときまでいろいろと面倒ばかりだ。


「あっ私と漣が幼なじみってこと、引き続き秘密の方向でね」


「なんでだよー。別にそれくらいよくねぇ?」


コイツは何も知らないようだ。私が小、中と世話係とかいうだけでクラスの女子に妬まれイヤガラセされてきたか。


「とにかく。約束だから」


「ハイハイ」


いい加減な返事だけれど、漣が私との約束を破ったことは一度もないから、安心はした。


1つ角を曲がった。もうすぐ家に着く。


「あい、窓開けとけよ。行くから」


「誰も来いなんて言ってないんですけどねー」


キュッとブレーキが掛かって、腕を離して荷台から降りた。


「ありがとね」


鞄をカゴから出して家に入っていった。