ドルチェ

小さい頃から変わっていない漣のにおい。
妙なことを考えている自分が恥ずかしくなって


「漣、汐奈があんたのこと気に入ってるよ。特にあの帰り際の作り笑いにときめいてた」


どうでもいいことをつい口走ってしまった。


「ふーん。俺、アイツ嫌いっぽい。あいちゃん俺のこと守ってねぇ♪」


「キーモーイー!!!あいちゃんとか、何年ぶりに言った?
ってか、何?嫌いって。初めて会ったんじゃん」


急カーブに入りそうになって漣の腰に右腕を回した。


「なんかーわかんねぇけど。勘かな」


ハハっと笑った漣の腰をさらにきつく抱きしめた。


なぜ、こんなことをしたのか分からないけど。


急にしたくてたまらなくなった。


漣にもっとくっついていたくなった。


漣は「離せ」とも「キツイ」とも言わずに、ペダルを漕ぎ続ける。