ドルチェ

式はだらだらムダに長く、本当に立ったり座ったりするだけで
何をやっているかなんて全く頭に残らなかったし、長々と語られるこれからの高校生活のこととかも、
内容も聞いていても聞いていないようだった。


あくびが出る。


横目でちらりと先生達が座っている方を見ると、桜田先生と目が合った。


…気がした。


ぱっと下を向いて、なんだか馬鹿らしくなった。


目なんて合っていないかもしれないのに、勝手に恋する乙女♪みたいなことになったり。


そもそも教師が生徒と。ましてや私なんかを特別みたいに思ったり、それ以前に今日初めて会ったばかりなのに。


ムダにドキドキしたり焦ってみたり、ありえない。


そんなことグダグダ考えているうちに式は終わったみたいで、また拍手が起こって新入生が立ち上がった。


慌てて私も立ち上がって、眠そうに目を擦ってゆるゆる歩いていく汐奈の後ろをついていった。


体育館の外に出て思い切り伸びをして「疲れた」と呟くと、汐奈の横でだるそうに歩いていた小谷漣が振り返った。