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思えば、

あのカギが始まりだった。

大学院二年目を迎える私は、学習室の大掃除で手がかじかむ程の寒さにうんざりしていた。

桜の蕾も、まだ訪れる気配のない暖気に、じっと身構えているようだった。

「こら、サボるなー。」

座り込んでいた私の頭にコツンっと優しい喝が入った。

「‥っ!
美嘉先輩〜。手伝いに来てくれたんですか?!」

「そう言いたいとこだけど、私もう帰らないといけなくなって、お別れを言いに来たんだ。ごめんね。」

「そうですか‥
いよいよなんですね。」