無い物ねだり

「マジか!へぇー。俺の娘は人をおちょくる意外才能がないんじゃないかと思っていたけど、やるじゃねぇか」
おじさんは嬉しそうに言った。
「そうだよ、お父さん。私、すっごい霊能力者なんだから!」
「じゃあ、アレか。今も見えていたりするのか、幽霊が」
「兄さん、もうやめなよ。周りの人が見ているよ。恥ずかしいだろ」
「気にするこたぁねぇよ。テレビだって、よく心霊特集とかやっているだろ。あれは視聴率が取れるからやってんだ。そんだけ、みんな幽霊に興味があるんだよ」
「でも…」
「で、どうなんだよ。今、お前に幽霊は見えているのか?」
バクバクッ!私の心臓は変な鼓動を打った。
(やめてぇーっ!)
私はひどくドキドキした。たまらなくイヤな予感がする。思わずテーブルの下でテーブルの脚をガッチリつかんだ。
「ええ、見えているわ。スゴイのが」
とたん、お姉ちゃんは私をビシッ!と指さした。テーブルについていた全員、彼女の指に引っ張られるよう私を見た。指を指された私は、ビックリして目を全開に見開いたまま頭をのけぞらせた。
「スゴイ幽霊が」
ゴクリ、私は唾を飲み込んだ。
「涼の後ろに立っている」
私は突然、雷にでも打たれたかのようにビクッ!と体を大きく震わせた。
「り、涼。どうした?大丈夫か?」
父の問いに私は答えられない。『キ』と一言発するので精一杯だった。
 そして、さらに頭をのけぞらせた。すると、グラリと天井が動いた。
「あっ!」
誰かが叫んだ。とたん、私の体は、座っている椅子ごと後ろへ倒れた。
 ほどなくしてバッターン!と何かが倒れる音がした。今度は違う意味で私の体が震えた。椅子が倒れた衝撃で体が震えたのだ。
「やだ!涼。大丈夫?}
「涼ちゃん、大丈夫?」