軽いめまいが襲う。


私はガバンを手に取り、

ホームへ降り立った。


どんよりとした曇り空。

押し潰されてしまいそうだ。

ポケットから切符を取り出し、

そこに書かれた駅の名前に目を向ける。


知らない街へ行きたい。

どこでもいい、

私のことを知る人間が誰もいない街へ―――。


その願いは叶ったのに、

私の心はあの頃のままだった。


自分自身に嫌気がさす。

結局のところ、私はいつも過去にすがっている。

歩き始めることに戸惑い、

後ろばかりを振り返る。

そうすることでしか、

自分を取り留めることができないでいた。



改札を抜け、会社へ続くお決まりの道を

ただ、ぼんやりと歩く。


生気などまるで感じられない。

人形劇の人形のほうが、

よほど生き生きとしているだろう。


もしかしたらあの時、

私は本当に死んでしまったのではないのだろうか。


『生きる』って、

何なんだろう。


大きな道路を挟み、

会社はもう目の前にまで迫っていた。