この街が特別に好きなわけじゃない。


特別に楽しくないし、

特別につまらなくもない。



この街へ移り住んで半年。


『特別なこと』が何もないのが、

この街を選んだ決め手だった。



小さなバックに記憶だけを忍ばせ

思い出は故郷へ置いてきた。



ホームが近づき、

私は腰を持ち上げる。


置いてきたはずなのに、

不意に蘇ることがある。


ふとした瞬間、

何気ない拍子に、

前触れもなく突然に。


あなたの声が、

匂いが、

温もりが…。