耳にはイヤホン、化粧に勤しんでいるかと思えば

携帯を開き受信メールを確認する女子高生たち。

彼女たちに注がれる冷たい視線

そんなものには目もくれず、

自分の世界に没頭をしているようだ。



いいや、何もそれは、

彼女たちに限ったことではない。

大のおとなが我が物顔で

新聞を大きく広げ、

ズボンがはち切れんばかりに

その脚を開いている。



いつもの風景、いつもの朝、

そして、いつもの虚無感―――。

いつもと同じ時間に、

同じ車輌で揺られる私。



誰にも悟られないように

小さくため息をつく。


もちろん、私を気に留める人間が

この空間にいないことくらい知っている。

だけど、誰にも気付かれたくなかった。


彼らに紛れ、それでも彼らと混ざりたくはない。

彼らに染まりたくなかった。


あの人に愛された私は


特別な存在なのだと思いたかった。




私は再び、小さくため息をついた。