「雪洞?」







夜中の回廊を走る中、ふと呼び止められた。









「呉葉姐さん・・・」








簪は一本も指しておらず、髪は切られていて、いつもならあり得ない山吹色の着物を着ていた。









「何処か・・・行くんですか?」









呉葉は、しっと唇に指を当てた。









「みんな寝てるでしょう?」









「予定が早まったの。今夜、礎に送ってもらって、ね。」










「女将さんのお知り合いの寺で、生涯を送るつもり。」









優しく微笑んだ。