時は少し遡り、夜見世が始まる前の、夕七つ時。









「凪雛、氷雨の身請けは、正式に決まった。しかし・・・」








「希望の通り、二月一日の夜中。誰にも見送られずに、迎えを頼むということになった。」








女将は、それだけを言った。







凪雛と氷雨は、頭を下げた。








「呉葉は・・・礎に。」







「はい。礎にお頼み申しんす。わっちは、一月三十一日に・・・」







呉葉も頭を下げた。







「ようやく・・・解放されるのか。」







しばらくして、女将が言った。







「解放なんて言わないでおくんなし。わっちたちが今あるのは・・・風華姐さんのお陰でありんす。」







凪雛が微笑んだ。