向かい合わせの恋





「…梨乃?」


何も反応のないあたしを不思議に思ってか、直兄は運転しながら横目であたしを見つめる。




「ねえ、直兄?」



もう…


やめる。



「…大人なんだからちゃんと自分で起きなきゃダメだよ?」



いくら想っても…届かない。



「…は、急に何。」



辛いだけなんて、こんなの…




「あたし、もう行かない。だから、ちゃんと起きてね?」



一方通行のままの苦しい苦しい恋。




「…何言ってんだよ。」




「だからあたしのことも学校まで送ってくれなくていいから。…ばいばい!」




もう、やめるんだ。






「おい!梨乃!!!」





ばいばい…直兄。






赤信号で止まっていた車を飛び出して、あたしは走り出した。



もう、やめるんだ。