「梨乃…お前なあ、話しの途中だぞ?ったく…」
先に車に乗ったあたし。
いつものようにかっこよくスーツを着こなす直兄が運転席に座る。
「ごめんね?明日からはもうしない。」
「当たり前だ、あんなのやられたらさすがの俺でも…。」
もうしないよ。
もう…
「ねえ、直兄…昨日の夜何してたの?」
「は?だから昨日は…。」
残業だって?
違うよ…
「違う、もっと遅い時間、直兄いなかったよね?あたし勉強教えてほしくて行ったのにいなかった。」
そんなの嘘…。
試すような真似してごめんね?
けどおあいこだよ。
今から直兄もあたしに嘘、つくでしょう?
「ああ、同僚の奴らと飲んでたんだ、ごめんな。」
優しく左手であたしの頭を撫でる直兄。
今はそれさえも冷たく感じる。
そっか…
直兄があたしの頭を撫でるときっていつも…
嘘をついた時なんだね?

