「…直兄!!!起きろ!」
いつもより少し大げさに大声を出して、布団の上からダイブしてやった。
「…ってぇ!ゴホ。」
あれ?
これ効果絶大?
一瞬にして開いた直兄の目。
「お前な!危ねーだろ。」
寝起きのわりに意識もハッキリ。
うん、絶好調。
「…はは、じゃあ早くしてね?」
今にも零れそうな涙を見られたくなくて、あたしはすぐに部屋を後にした。
なんてガキなの…
こんなこと珍しいことじゃないのに…
直兄だってもう立派な22の大人。
これくらいどうってことない。
わかってるのに…
悔しくて…悲しくて…
あたしの知らない直兄をその首もとの赤い印をつけた人は知ってるんだ。
あたしの知らないところであたしの知らない人にあたしの知らない甘い言葉を囁いて…
あたしの知らないところであたしの知らない人と愛を確かめあうの?

