捨て猫に愛をください

家には,物が豊富にありすぎた。
上履きだけでなぜか何十種類も置いてあるし,服だってどれも高い生地でできた立派なものが何千着もあったから,盗まれたって親は気付かなかった。

担任には相談出来ずにいた。
後でｲｼﾞﾒ軍団に知られたら何をされるかわからない。

そんなある日,鞄が奪われた。
｢あっ!｣
｢何だよ。鞄くらい,いくつでも買えるんだろ?｣
｢なぁ,坊っちゃま｣
｢何睨んでんだよ｣
｢気持ち悪ぃー｣
｢か,返して･･･｣
心臓をﾊﾞｸﾊﾞｸさせながら,俺はｲｼﾞﾒ軍団に初めて反抗した。
｢あぁあ?｣
｢おい今こいつ何か言ったぞ。｣
｢ｷﾓｲから黙ってろ｣
ﾊﾞｺｯ
頭にきた,初めての酷い衝撃に涙が出そうになった。殴られたのなんか初めてだった。
いつも物を奪われるだけだったのに･･･。


｢こいつ泣いてる!｣
｢やべ,ｷﾓ｣
｢おいﾅｶｼﾞﾏ,鞄の中身お披露目してー｣
｢ｵｯｹｰ｣
ﾅｶｼﾞﾏが俺の鞄の金具が付いた部分をｶﾞﾁｬｶﾞﾁｬと開け始める。