愛した名前



私は少しの間で沢山の涙を流した。


その間、けいは何も言わずにずっと優しく抱きしめてくれていた。


私たちの横を通る人がじろじろと見てきても、何も言わずに私を守ってくれた。


凄く、安心する腕の中。


この存在は無くしてはいけない、大事な存在だ


そう思った。







「・・・もう、大丈夫。ありがとう」


私がそう言うとけいは私を放して顔を覗き込む。




そして、心配そうな顔で言う。


「好きな人って、誰・・・?」


「え・・・」


黙りこむ私をじっと見つめる。


「好きって・・・どういうことなのかな・・・?」


私の質問にけいは少し考えて言った。


「いなくちゃいけない人。俺は・・・さきがその人」


けいは優しく微笑んだ。


けいが・・・私を好き・・・?


私はけいにとって、いなくちゃいけない人・・・?


「けいは私にとって、なくしちゃいけない人・・・」


「それって・・・?」


期待したような顔で私を見つめる。


「好き・・・なのかなぁ・・・?」




私が弱ってたからかもしれない。


それでも、絶対言えること





『なくしちゃいけない存在』