突然、僕は何かにつまずいて大の字にこけた。足もとに近づけ照らすと、何か白い塊だった。ゾクッと背筋を走る悪寒とともに、それが白骨だということが分かった。僕は一目散に、あの頃のような勢いで走りだした。しかし、地面が少しぬかるんでいるせいで、なかなかうまく前に進めない。足が絡まりつんのめった拍子に、行き止まりにおでこを強打した。その時その壁が一瞬動いたような気がした。いや、気のせいではない。確かにその壁はうめき声をあげながら、こちらに向かってくる。それはよく見ると、3メートルほどある黒い毛むくじゃらの怪物だった。真っ赤に光った二つの目。縄文杉のような太い腕。そして研ぎ澄まされた鎌のような爪で、僕に襲いかかってきた。すかさず身をかがめ一撃をかわす。しかし、待ったなしにもう一方の腕がとんでくる。僕は現状が把握できず、涙目になりながらも、その怪物の股の間をくぐり抜け背後に回る。そして、ズボンのベルトをはずし、ムチのようにしならせ怪物に攻撃をくわえた。何故こんなことをしてしまったのだろうか。僕は無知だった。怪物は思いのほか怒った。のしのしと荒れ狂い僕のベルトの奪っては、素麺のようにたいらげた。そして、その巨体からは想像もつかない俊敏な回し蹴りをお見舞いされた。僕の体はスナック菓子の食べカスように吹き飛ばされた。僕は調子に乗った自分を反省しつつ、逃げ道を探した。背後には怪物が迫ってきていた。僕はとっさに手にもった携帯を投げつけ、時間稼ぎをした。しかし、怪物はあっという間に携帯を飲み込み、突進してきた。ふと、壁に人ひとり入れるかどうかのスペースを発見した。がむしゃらにその隙間にタックルした。僕は吸い込まれるようにその壁にズルズルと飲み込まれていった。怪物はうめき声を上げながら、何度も何度もこの隙間にタックルしたが、到底通ることはできなかった。こうして何とか怪物をまいた。