先生の授業は、本当にあっという間。


数分前に始まったんじゃないかと錯覚するくらい。


「もうチャイムかあ…。早いなあ。それじゃあ、今日はここまでな!」


先生の合図で、授業が終わった。


黒板を消し始める先生に、女子生徒が1人、また1人…。


すぐに6,7人の生徒に囲まれてしまった。


「先生とられちゃったね。愛菜は行かなくていいの?」


和沙が後ろの席からやって来た。


「次の授業あるから、行かないといけないでしょ!」 

テキストとノートを手に抱え込んだ。


先生と話をしたいけど、あの輪の中に割り込んでいくのもなあ……。



そう思いながら、教室を出る時、先生の顔をちらっと見た。


先生はすぐに気付いて優しい視線を送ってくれた。


またアイコンタクトしちゃった…。


言葉は交わしてないけれど、“授業お疲れさま”っていう声が聞こえてくるような気がした。