「そのかわり…にはならないかもしれないけど、電話するよ。時間、今ぐらいでいい?」



「はい!」



会えなくても、電話で先生の声が聞けるんだ…。



「ただし、今は受験の大切な時期だから、そんなに長話はしないからな。少しだけ…だぞ?」



「…はい。」


少しだけ…かあ…。
声のトーンを落として返事をした。


「愛菜の将来をきめる大切な時だからさ…。今は自分の時間…、大事にしてほしいんだ。」



先生は本当に私のためを想って言ってくれてる。



そうだよね…。


今は自分の受験に集中しなくちゃ。



応援してくれる先生のためにも、精一杯頑張るよ。





「…愛菜、今、空見上げてるだろ?」



不意に先生が言った。



「よく分かりましたね!」


「風の音が少し聞こえるからさ。」



“ガラッ”



電話の向こうからその音が聞こえてきた。



「先生、窓開けたでしょ?音が聞こえたよ。」



「うん。ベランダに出てみた。愛菜が見ている夜空、俺も見ようと思ってさ。」


二人で今、空を見てるんだね…。