山は閑散としていた。当然だった。あと二日もすれば九月なのだ。海にはクラゲが浮き、浜辺には数日前の台風の名残りが、黒光りのする海草の山となって残っていたくらいだ。史上希なる猛暑と残暑のせいで、「私」の感覚は若干麻痺していた。