そうなるまでに、何も気づかなかったわけではない。遊歩道の様子が、どこかおかしいことは分かっていた。ベンチである。遊歩道の先々にあるベンチに、私は釈然としないものを感じていた。別にどうと言うことのないコンクリートの味気ないベンチであったが、その漠然とした何かが判明したのは、「私」のとめどない好奇心が「私」自身を現実世界から隔絶させてしまってからずいぶん遠くに行った頃だった。何か。