森に喰われる、と言う感覚を味わったのは、何も一度きりではない。それ以前にも、その後も何度となく、木々の放つ穏やかな恐怖に身をさらしたことがある。だが、その山で感じた「それ」は、「私」と言う一個人の存在の危機と言うよりも、更に深く、得体の知れないものだった。